【シンジュウエンド】36話「夕日と朝日と」ネタバレ ストーリー&登場人物│秘密基地で佑と見る夕日、思い出す真志と見た朝日
漫画「シンジュウエンド」は漫画アプリ「マンガMee」で連載のマンガMeeオジリナル作品です。
不倫、死別、晒し、イジメ、家庭崩壊など様々な理由によって死を選ぼうとしたサラリーマンと女子高生の物語で、著者はドラマ化もされた人気漫画「サレタガワのブルー」のセモトちか先生です。
この記事ではシンジュウエンド36話「夕日と朝日と」のストーリーと登場人物を分かりやすくまとめています。
彼らを絶望させた最低の人物、最悪の出来事とは?
どん底に落ちた人生を彼らはどうやり直していくのか?
「シンジュウエンド」の物語を詳しく解き明かします!
「シンジュウエンド」あらすじ
イケメンで爽やかな営業マン・遠藤真志25歳。
社内では若手のエースとして期待され、家に帰ればかわいくて優しい妻と、世界一愛らしい娘が出迎えてくれる。
仕事も家庭も順調そのもの。そんな幸せの絶頂だったある日、玄関に見知らぬ男物の靴があって…?
人生に絶望した男と、人生を諦めかけた女子高生の出会いがもたらす、“終わり”と“始まり” とは――。
『サレタガワのブルー』の著者・セモトちかが描く、読めば“死にたくなくなる”再生の物語。
「シンジュウエンド」36話の登場人物
羽住 鈴(はすみ すず)
18歳 高校3年生
父は交通事故で他界。
母親と二人暮らしだったが、母親が毒親化したため佐賀県の父方の祖母宅で新しく生活を始める。
鈴田 佑(すずた ゆう)
高校3年生
鈴のクラスメイト
あだ名は『リンダ』
神童と呼ばれ、地元では有名な裕福な家の息子。
父はバイクショップ「バイクのリンダ」代表取締役社長。
父には愛人が5人おり、佑は正妻の息子で一人っ子。
愛人たちの子供(佑の異母兄弟)は総勢11人。
「シンジュウエンド」36話のストーリー(ネタバレあり)
シンジュウエンド36話「夕日と朝日と」は、風邪をひいた佑の自宅を鈴が尋ねるところから始まります。
以下、シンジュウエンド36話のネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さいね。
36話「夕日と朝日と」
担任に頼まれた大学の資料を届けに佑の自宅へ鈴が着いた頃には、日は傾き空には青と橙が混ざり始めていた。
佑の家が金持ちだと聞いてはいたが、それは豪邸と呼べるような邸宅で、一般的に想像する「友人の家」とは掛け離れたお屋敷感に鈴はたじろいでしまう。
鈴の背丈を優に超えるほどの立派な門扉の前に立ち、自分のような庶民が呼び鈴を押しても良いのだろうかと鈴が悩んでいると、邸宅の扉が開き佑が外へ出てきた。
風邪は治ったと言う佑に先生から頼まれたプリントを届けに来た事を伝えると、鈴に来て欲しかった佑が先生に頼んだ事だったらしい。
そう面と向かって言われ照れて何も言えなくなった鈴だったが、散歩に付き合って欲しいと佑が言い、二人は夕暮れの道を歩き出したのだった。
夕日が照らす住宅街の道を二人で静かに歩く。
何となく気まずい空気が流れていたが、沈黙を破るように佑が話し出した。
最近寒くなってきたことや、ご近所さんの事。角を曲がったところにあるまあまあマズいパン屋のこと。
他愛もない世間話だったが、佑は珍しくよく喋った。
それを指摘すると、どうやら佑も緊張しているらしい。昨日告白した相手なのだから、と。
自分で言わせておきながら、鈴の心臓は跳ね、頬が染まる。
いや、祖母のアドバイス通り「佑の事は友達として大切」だと伝えなければ。
あんなに真剣に告白してくれたし、都には「追われる恋を試してみたら」と言われたが…。
色んな言葉が鈴の中を駆け巡り、心の中を掻き乱す。
しかし、佑に言うべき言葉は…。
「あ…あの 佑
そのこと…なんだけど…」
重い口を開いた鈴だったが、気付けば佑は隣におらず脇道から鈴を手招きしていた。
見れば住宅街の隙間にぽっかり現れた細道で、石段が上に続いている。
どうやら佑はこの階段を登っていくようだ。
階段の両脇は木が生い茂り、森の中をかいくぐるような足場の悪い道だった。
こんな場所に入り込んで良いものかと鈴は怖気づいてしまったが、この山は鈴田家の土地らしい。
そんな事を話していると、鈴は大きめの石に躓きこけそうになってしまった。
とっさに佑の手が伸び鈴の身体を抱き留める。
思わず密着する身体にお互い照れながら、佑は気をつけてと鈴の手を握り、道を先導する。
それはとても自然でスマートに見える身のこなしであったが、前を歩くの佑の耳は、後ろからでも分かるほど真っ赤に染まっていた。
鈴と繋いだその手は汗ばみ、少し震えている。
『…そっか いつも冷静な佑が本当に 緊張…してるんだ
私が…「好きな人」だから…?』
佑の緊張が繋いだその手から伝わるかのように、鈴の体温も上がる。
世界には何十億と人がいるのに、その中から私を選び私を一番好きだと言ってくれる人…。
私が転ばないよう、緊張した手を繋いでくれる人、
私が雨に濡れないよう、己の肩を濡らしながらも守ってくれる人、
他に好きな人がいる、そんな私に「それでも好きだ」と伝えてくれる人…
歩き続けていた佑の足が止まり、鈴も隣に並ぶ。
佑の整った横顔を見上げながら、鈴は思った。
私にとってそんな人、この先佑以外に出会える気がしない—…。
着いた、と佑が言った。
佑が山を登ってでもこの場所に来たかった理由。
それは二人の眼前眼下に広がっていた。
間もなく日没。
今まさに地平線へと沈みゆく太陽。
青と黄とオレンジと朱、空に描かれたグラデーション。
空の下には田舎の町風景と山々の緑が夕焼けに染まっていた。
それは全てを忘れるほどに、興奮が抑えきれないほどの絶景であった。
「うっわぁぁああ… 綺麗…!!」
ここは、子供の頃からの秘密基地なのだと佑は言う。
誰も何も言わない静かなこの場所は、佑にとって唯一イヤホンを外せる場所なのだ。
父親の不倫が初めて発覚した日、
異母兄弟が11人いると知った日、
『バイクのリンダ社長一夫多妻制』がトレンド入りした日、
荒れた母親が3か月帰ってこなかった日、
どれもよく覚えているそれらの日、佑は一人この場所で過ごしていたのだった。
「後にも先にも この場所だけは 誰にも教えるつもりはない
お前だけ 特別」
そう言って佑は鈴を見つめ、そっと耳からイヤホンを外した。
佑の言葉に思わず胸がときめく。
しかしときめく自分に気付いてばつが悪く、鈴はふいに目を逸らした。
つい鈴の口から漏れてしまったのは、佑の揚げ足を取るような言葉。
佑は以前「1人でいる方がラク」だと言っていた、と。
鈴の指摘に、佑はそう言っていたと素直に肯定した。
しかし、今は違うのだと、価値観が変わったのだと続ける。
鈴と出会い、佑は気付いたのだ。
1人見る夕日よりも、鈴と一緒に見る夕日の方が綺麗なのだと。
佑の真っ直ぐな言葉が、気持ちが、鈴は嬉しかった。
胸が震えるほど、泣きそうになるほど、嬉しいと思った。
二人の身体をオレンジに染める夕焼けの温かさが、好きになってもらった優しい気持ちと重なって、それは繋いだままの手から互いの体温を通して身体を巡る。
嬉しい、その感情と同時に、胸を締め付けられるようなこの気持ち。
それは瞼を閉じると蘇る。
展望台、崖、海…
鈴にとって、最も特別な思い出…。
真志と見た、あの綺麗な朝日。
鈴は佑の繋いだ手を勢いのまま振りほどいた。
「…佑っ! ごめん!」
佑とこの夕日を見て、思い出すのは真志と見たあの朝日だったのだ。
鈴は捲し立てるように一気に言い放つ。
東京へは一人で行く、
佑は佐賀で進学した方がいい、
私は佑の気持ちに応える事はできない、と。
焦りと心苦しさの中、自分へ言い聞かせるように、けじめを付けるように、鈴は全てを言い切った。
しかしその言葉は、佑の目を見て言うことはできなかった。
To Be Continued
セリフ引用:マンガMee
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