【シンジュウエンド】29話「鬼」ネタバレ ストーリー&登場人物│パワハラ疑惑の鬼島・都と佑と雷雨

漫画「シンジュウエンド」は漫画アプリ「マンガMee」で連載のマンガMeeオジリナル作品です。
不倫、死別、晒し、イジメ、家庭崩壊など様々な理由によって死を選ぼうとしたサラリーマンと女子高生の物語で、著者はドラマ化もされた人気漫画「サレタガワのブルー」のセモトちか先生です。
この記事ではシンジュウエンド29話「鬼」のストーリーと登場人物を分かりやすくまとめています。
彼らを絶望させた最低の人物、最悪の出来事とは?
どん底に落ちた人生を彼らはどうやり直していくのか?
「シンジュウエンド」の物語を詳しく解き明かします!
「シンジュウエンド」あらすじ

イケメンで爽やかな営業マン・遠藤真志25歳。
社内では若手のエースとして期待され、家に帰ればかわいくて優しい妻と、世界一愛らしい娘が出迎えてくれる。
仕事も家庭も順調そのもの。そんな幸せの絶頂だったある日、玄関に見知らぬ男物の靴があって…?
人生に絶望した男と、人生を諦めかけた女子高生の出会いがもたらす、“終わり”と“始まり” とは――。
『サレタガワのブルー』の著者・セモトちかが描く、読めば“死にたくなくなる”再生の物語。
「シンジュウエンド」29話の登場人物

遠藤 真志(えんどう しんじ)
25歳 サラリーマン。
妻・敦子、娘・未来の3人家族。
妻の自殺により父子家庭となる。
ハーモニー光電 北町営業所に勤務していたが、SNSでの炎上騒動により本社の書類整理三課に異動となった。
遠藤 敦子(えんどう あつこ)
24歳 専業主婦。
夫・真志、娘・未来の3人家族。
愛称は「あっちゃん」
高校時代の恋人・三崎 コウキと同窓会で再会し、コウキが敦子を口説いたことにより不倫関係に発展する。
コウキとの心中により死亡。
鬼島(おにしま)
ハーモニー光電 本社/書類整理三課に勤務。
真志の同僚。
元・海外事業部所属。
噂によると部下に対するパワハラにより書類整理三課に左遷。
羽住 鈴(はすみ すず)
18歳 高校3年生
父は交通事故で他界。
母親と二人暮らしだったが、母親が毒親化した為、佐賀県の父方の祖母宅で新しく生活を始める。
鈴田 佑(すずた ゆう)
高校3年生
鈴の転校先のクラスメイト
あだ名は『リンダ』
神童と呼ばれ、地元では有名な裕福な家の息子。
父はバイクショップ「バイクのリンダ」代表取締役社長。
父には愛人が5人おり、佑は正妻の息子で一人っ子。
愛人たちの子供(佑の異母兄弟)は総勢11人。
佐田山 都(さたやま みやこ)
高校3年生
鈴の転校先のクラスメイト
「シンジュウエンド」29話のストーリー(ネタバレあり)

シンジュウエンド29話「鬼」は、真志の同僚・鬼島と都の過去が語られます。
以下、シンジュウエンド29話のネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さいね。
29話「鬼」


書類整理三課に異動してから初めての給料振込。
先月より10万円も下がった給料に震えあがった真志は優雅にランチをする余裕などなく、静かな公園で一人おにぎりを頬張った。
明日からはおにぎりと水筒くらいは自分で…そんな事を考えていた真志に声を掛けた人物がいた。
「あの… …隣 いいかい?」
彼は書類整理三課の同僚だった。

真志に声を掛けて来たのは同僚の鬼島であった。
真志よりもだいぶ年上の中年男性。
少しぽちゃっとした風貌で穏やかな雰囲気の人である。
「ぼくもよくここでお昼食べるんだー」
休み時間もあの部屋にいるのは気が滅入るからと、昼休みはよくこのベンチに来ているらしい。
そこへ真志が座っているのを見付け、声を掛けてきたのだろう。
確か鬼島さんは…
部下にパワハラをして海外事業部から左遷された、とウワサの人だ。
鬼島は偶然にも真志とまったく同じチョイスの昼食を袋から取り出し、あたためてもらえばよかったと呟いておにぎりを一口かじった。

「…あのさ 遠藤くん
気を悪くしないで聞いてほしいんだけど…」
今までこうやって部署内の人とじっくり話す機会は無かったが、鬼島は密かに真志と話をしたかったようだ。
鬼島は物言いたげな目線を真志に向け、遠慮がちに口を開いた。
何事かと話を聞けば…何と鬼島はダンシングフラワーマイカこと舞華のファンなのだと言う。
どうやら鬼島は「アポっぽいギャル」がタイプのようで、舞華が高校生の頃からアカウントをフォローしている、いわゆる古参ファンなのだとか。
それは舞華が炎上させた相手が同じ部署に飛ばされてきたなど、さぞかし驚いただろうし、どんな人物か気になって仕方なかっただろう。
しかも舞華は1年ほど前から胡散臭い商品の紹介投稿が増えたらしく、それに加えて真志の炎上騒動である。
鬼島は舞華の「友人A子の葬儀に行った」という投稿ももちろん見ており、真志の炎上についてネットで色々調べたらしい。

妻へのDVについて真偽を聞かれたが、真志は虚偽の情報を拡散されたときっぱり言い切り、鬼島もその言葉を信じてくれたようだ。
それにしても、なぜ鬼島はここまで真志の事を気に掛けてくれるのか。
舞華ファンである事も理由だろうが、なんと鬼島自身もSNSでの炎上被害を受けた過去があるのだと教えてくれた。
時は遡り、鬼島がまだ海外事業部の出世コースでバリバリ働いていた頃。
新入社員の指導係に任命された鬼島は、新入社員の目に余る勤務態度を注意した事があった。
いい加減な仕事によるミスや寝坊など、どう考えても相手に非がある内容であったが、そのたった一度の叱責が鬼島を窮地に追いやった。
若い彼に成長してほしい。
そんな思いで指導した鬼島の音声は、密かに録音されていたのだ。
鬼島の詰め寄るような強い言葉だけが切り取られ、彼によってその音声はSNSに拡散された。

叱ったのはその日だけだった。
しかし「部下にパワハラ」という冤罪を掛けられ、書類整理三課に飛ばされたというわけだ。
鬼島ももちろん会社に猛抗議したが、「もう少ししたら海外事業部へ戻す」と言われ続け、気付けば17年も経過していたらしい。
書類整理三課に来た当初は、鬼島もただ座っているだけの日々ではなかった。
真志と同じように他部署にヘルプに行ったりトイレ掃除をしてみたり、澱んだ自部署を盛り上げようとしたり…。
しかしそんな鬼島の行動は、やる気のない同僚から見れば煩わしかったのだろう。
他部署からすれば鬼島だけが仕事熱心で他のメンバーは働いていないように見られるし、「ホッチキスとシュレッダーだけ」の業務をむしろ気に入っている同僚もいた。
そうして今となっては鬼島も他の同僚と同じく、書類整理を淡々とするだけの毎日になってしまったのだ。

ちょうど長女の高校受験の時期とも重なり「クビにならなかっただけマシ」と自分に言い訳し、退職する勇気も出ず、ずるずると居続けて転職も難しい年になってしまった。
そんな所に自分と同じような理由で書類整理三課へやって来て、当時の自分と同じように張り切る真志を見て、鬼島も思うところがあったのだろう。
鬼島は自分みたいにはならないで欲しいと真志に伝えたかったのだ。

昼休みも終わりに近付き会社に帰る道すがら。
鬼島は真志を大いに誉めてくれた。
真面目・明るい・元気・仕事ができる・人当たりがいい・顔が良く非常にかっこいい。
これでもかと真志の良さを連ね、同時に真志の存在を光と影になぞらえる。
太陽は恵みの象徴であるとともに、時には眩しくて疎ましい。
完璧であればあるほど、太陽の知らぬ内に周囲から嫌われてしまう事もあるだろう。
鬼島のその言葉は、敦子が医師に語った本音を思い出させた。
敦子は真志ではなく完璧ではないコウキと生きていく方が合っている気がする、と…。
敦子の気持ちに気付いてやれなかったと思うと真志は俯くしかなかった。
しかし、冬なのに太陽の光のおかげであったかいね、と鬼島は空を見上げた。
つられて真志も顔を上げる。
その時ふと、あの崖で夜明けを待ちながら、鈴と二人で見た朝日を思い出した。

敦子の心に寄り添えなくて、知らぬ間に追い詰めていた自分は完璧なんかじゃない。
けれど、自分なりの正義で鈴を、一人の人を救えたんだ。
彼女は今、見知らぬ土地で祖母と共に一生懸命生きている。
…うん 頑張ろう 俺は…凹んでる場合じゃないか
鬼島の体験談は真志に新たなきっかけを与えてくれた。
真志と同じような理由で書類整理三課に飛ばされ、真志と同じように会社に抗議し、真志と同じようにあの場所で一生懸命もがいてきた。
そんな鬼島はそれから17年、何も変わらなかったと教えてくれたのだ。
真志は鬼島に礼を言い、転職しようかと前向きに思えたと伝えると、鬼島も穏やかに笑ってくれた。

進路指導室で鈴と担任が話しているのを聞いてしまった。
鈴は東京の就職を希望しているらしい。
都は階段を降りながら、鈴と佑の進路希望を頭の中で比べてみる。
前回の進路希望調査の時、こっそりと見た佑の用紙には佐賀の大学が第一志望と書いてあった。
佑には異母兄弟がたくさんいるが、『バイクのリンダ』を継がせるのはきっと秀才の息子・佑であろう。
そうなると佑はずっと佐賀にいる事になるだろうし、鈴は東京の想い人のところへ…。
いくら国内と言えど佐賀と東京はかなりの距離だ。
ならば都が佐賀に残れば佑との恋にチャンスが巡ってくるかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると、ちょうど佑が後輩に告白されている場面に出くわしてしまった。

1年女子が読んでくださいと差し出す手紙、それを受け取る事もなく「読まない いらない」と拒否する佑。
佑のあまりのつっけんどんな態度に「ひどか…!」と女子生徒は泣きながら走り去ってしまった。
佑が髪を切ってから何人目なのか。
本人に聞いても覚えていないようで、覚えられないほど告白される爆モテ期に突入した事も焦るが、告白してきた相手をバッサリ切る様子にもちょっとビビってしまう。
佑としては、話したこともない人からの手紙は気味が悪く不愉快だし、その気も無いのにヘラヘラ受け取るのが正しいとは思わない、という事らしい。
リンダは嫌われる事を恐れていない、強くて優しい人。
だからこそ、今自分が告白してもフラれるだろう、と都は思っていた。
「あ …雨だ」
佑の声に顔を上げると、廊下の窓に大粒の雨が当たっていた。

都はふと思い出す。
小学生だった、あの日の小さな自分を。

小1のある日、学校の帰り道。
小さな体にランドセルを背負った体をさらに小さく縮こませ、都は木の下で耳を塞いでしゃがみ込んでいた。
降り注ぐ雨に轟く雷鳴。
小学生の都は、雷が怖くて怖くて仕方なかった。
都が傘をさしたまま道端でうずくまっていると、ちょうど佑が通り掛かった。
佑は小学生の頃から遮音性を高める為の耳栓をしていて、眼鏡を掛け、髪は肩に掛かるくらい男子にしては長かった。
怯えた様子の都を見て取り乱す事もなく、佑は小学生とは思えぬような落ち着いた声音で、体調が悪いなら大人を呼ぼうか?と声を掛けてくれた。
正直に雷が怖いと都が答えると、空は都を驚かすかのように一瞬強く稲光を走らせる。

都は悲鳴を上げ、佑は何故か数字を数え始めた。
「…いち に さん し」
都にはまったく意味不明の行動だったが、空がゴロゴロ~と鳴り出すと、佑のカウントアップも止まる。
どうやら雷が光ってから鳴るまでの秒数を計っていたらしい。
佑が言うには、今は11秒の差があったから実際の雷はここから約4kmほど離れているのだとか。
よんきろとは、どれくらいなのか。
そもそも佑が何を言っているのかよく分からなかったが、雷は遠足で行った動物園より遠い距離にいると言われ、確かにあの動物園は遠かったと都も思う。
あれくらい遠い場所なら…。
「大丈夫 帰ろう」と佑が差し出した手を都は握り返し、手を繋いだまま雨のなか二人で帰った。

都は小1のあの雨の日を思い出して、この恋が切なくなった。
やっぱりリンダは優しい人だ。
打算的な優しさではなく、そうすべきと思った事を、素直に、論理的に人に与えられる優しさを持っている。
そんなリンダを、うちが絶対に一番、誰よりも好きだ。
周りは変身した佑に目がくらんでいるだけかもしれないが、佑が髪を切るずっとずっと前から…ずっと好きだった。
この気持ちを伝えたい。
佑とは付き合いも長く、さっき秒でフラれた女生徒とは違って都は知らない人間ではない。
「話したこともない人間」が理由で相手にしなかったのなら、ばっさりフラれたりはしないかもしれない。
都はそんな淡い期待を抱いていたが…
佑の心にはもう他が入る隙間はなさそうだった。
都の想いを打ち砕くように、佑は言う。
「…羽住 大丈夫かな
朝 傘持ってきてなかったけど」

窓の外で光った稲妻は立ち尽くす都の顔を照らし、間を置かず地鳴りのような音が轟いた。
どうやら雷は近そうだ。
To Be Continued
セリフ引用:マンガMee
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